安らぎも人生の道
異常なまでに静かで、ゆっくりと物語が進む。まさに道を歩いているかのような感覚になるヴィム・ヴェンダース監督「ロードムービー三部作」の2作目。自らの作家としての才能を見出すために旅に出た主人公ヴィルヘルム。その途中で、様々な人と出会い、彼らとの交流を通じて自己を見つめ直すという物語。
前作『都会のアリス』よりもちゃんとロードムービーしている反面、映画らしさが消えている。これといったストーリーの軸があるわけではなく、淡々と次に現れるものに身を任せる。前進あるのみ!といった作品でした。
哲学の域に踏み込んでしまうと中々理解するのに苦しみますが、本作のテーマはかなりバカにできない。主人公の精神的な成長、自己探求、そして社会的役割への疑問が主なもの。作家としての生きづらさや、周囲の期待から逃れ、自身のアイデンティティを見つけ出そうとする過程で、時には挫折し、時には他者と触れ合い自分の在り方を再発見できる。心と身体、2種のロードムービーを同時進行することに成功しています。
動いて、悩み苦しんで、そして休もう。自我を失いそうになったら外に出よう。現代社会における自己の確立、他者との関わりが生きる意味に繋がっていることを哲学的に学べた一作でした。難しいけど癖になる。
2025.1.19 初鑑賞