クシーくん

レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会うのクシーくんのレビュー・感想・評価

3.3
マッティ・ペロンパー演じるウラジーミル、前作ラストで「二度と彼を見た者は…」って言ってたのでどう出すんだと思ったんだけどそう来たかー。インチキ臭い宗教家になってるけど、横暴な独裁者ぶりは本作でも健在。パリサイ人め!酒に酔う事の悪徳について聖書を引用してドヤ顔してた次のカットでチャイナブルー飲んでたの好き。ビリヤードのキューが頭に当たってムッとした顔してたのは笑った。

メンバー刷新を図る為か、冒頭字幕でいきなりメンバーの半数が死んだ事になったのは悲しい。生き残ったチーム”メキシコ部”も前作の黒スーツスタイルから一新、皆ポンチョにソンブレロを被って、グラサンも外してメキシカンな髭を蓄えている。いずれも表情は暗い。後半から加わったメンバーとは異なり、復活したウラジーミルこと「モーセ」の事をよく知っている彼らはやりたくない時、演奏しても無駄な時は働かずに反抗するようになってしまった。約束の地ツンドラを目指すモーセとそれに不満ばかり言う民衆達ってことかな。

前回はロシア→アメリカ→メキシコで、死体を車の上に乗っけたまま走るなどメチャクチャではあったが、移動手段自体は飛行機に車と、まともだった。
今回はアメリカから手漕ぎボートみたいなのにエンジンつけて大西洋横断するむちゃくちゃぶり。更に地上1万m上空の飛行機から自由の女神の鼻を抱えたまま集合地点の海にダイブ!D.B.クーパーよりすげえや。
かように前作より荒唐無稽ぶりに拍車が掛かっているのだが、今一つノレなかったのは、全体的に暗い雰囲気が漂っているせいか。本質的なゆるゆるギャグのテイスト自体は変わっていないものの、「ゴー・アメリカ」と違って故郷への回帰をキリスト教的なモチーフに擬えているせいか、前作は一見ただのおバカ映画に見えるけど良作だったのに、今回は名作感を漂わせて要らん要素を付け足した為に、前作ほどには素直に楽しむ事が出来なかった。

流れるようなビンゴ営業、微妙な顔をされる結婚式、ワルシャワ駅前で雨に打たれながら"Lonely Moon"と、相変わらず演奏シーンは全て良かった。CIAのエリヤが"kili watch"をノリノリで歌い出す所は爆笑した。
クシーくん

クシーくん