ちろる

女は二度生まれるのちろるのレビュー・感想・評価

女は二度生まれる(1961年製作の映画)
4.0
夜の女は何度も生まれ変わる
ヤドカリみたいにここからあちらへ
惚れた男も憎い男も同じ顔して愛し合って、「虚しさ」なんて感情なんか、とうの昔に捨て去った。

川島雄三×若尾文子の三部作の最初の作品のこちら、先に後の2つを鑑賞してしまったので、比べてみたらこちらの芸者 子えんは悪女っぷりも少なくとても可愛らしい。
売春禁止法が根を張りはじめて、置屋のお仕事もなにかと不自由になった時代、第二の人生について身の置き方について目下お悩み中のアラサーの子えんの穏やかでない日々はとても興味深い。
ステキなイケメンさんを芸者同士で噂したり、一夜を共にした後目立たぬように洋装に着替えたり、仕事に陰りを感じる中でもカラッとした芸者たちの小粋で頼もしささえ感じる明るい雰囲気、これが川島流の描き方なのだろう。
客の中でもちゃんと「大切にしてくれるパパさん」「体目当てのいけ好かない男」そして、「ちょっといい人」と区分けしているのが分かる小えんの立ち振る舞いは何故だか決して八方美人にへ見えない。
それは芸者としての覚悟とプライドをしっかりと身につけて線の引き方をしっかりと知っているからだろう。
ラストの電車での小えんの駅での佇まいがとても美しい。
諦めと、覚悟とを同時に秘めて更なる強さを身につけた姿は哀愁ただようが哀れではない。
普通にこの時代に生きていたら覗く事の出来ないはずの小えんのような夜に生きる女の人生は、意外にも普通の女性でも共感できる女心で描かれていた。
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