てつこてつ

フェリーニのローマのてつこてつのレビュー・感想・評価

フェリーニのローマ(1972年製作の映画)
3.5
フェデリコ・フェリーニ監督の半自叙伝的な、ローマという古都でもあり大都会という都市に対して監督なりのオマージュが最大限に捧げられた作品。

ストーリーの流れがしっかりしているわけでもなく、監督目線での少年時代から現在に到るまでの歴史の教科書には書かれていない庶民文化を中心としたローマの近代史で、時代背景を示すテロップ表記など無く、主人公が登場しないシーンが挟み込まれたり、唐突に時代やシーンが飛ぶので、フェリーニ好きな方なら文句無しにお勧めできるが、フェリーニ作品初体験の方には、正直、向いてはいない。

自分にとっては、やはり好きな作品。

イタリア最大の撮影スタジオ・チネチッタに組まれた第二次世界大戦前のローマの街並みの大規模なセットや、イタリア=オペラくらいしか印象にはなかった戦時下での庶民の娯楽ボードヴィルの再現(これがなかなかの長尺でしっかり見せてくれる)、開けっぴろげに盛大にヤジを飛ばすイタリア人らしい気質が垣間見える観衆、高級娼館の内装やその客を取るシステムとか実に興味深い。アメリカを発祥地とするヒッピー文化がローマにも派生していたとは知らなかった。

庶民目線で作品を描きながらも、終盤の貴族のご婦人の大邸宅で披露されるランウェイまで使ったローマカトリック教会の法王や教皇、神父たちのファッションショーのシーンは、それまでの内容と対照的に、今見てもアバンギャルドで斬新。

イタリアを代表するアンナ・マニャーニが本人役でエンディング近くで1シーン登場するのも素晴らしい演出。彼女が去り、ローマの夜の闇が深くなるところでエンディングとなれば良かったのに、その後に続く、バイクの集団のライトに照らされて浮かび挙がる、コロッセオだのサンタンジェロ城など、ローマを代表する遺跡群が登場する演出は個人的には蛇足。

それでも、監督自身のメッセージとも言える「これまで何度も栄華と崩壊を繰り返したローマこそ、地球の最後を見届けるには相応しい場所」という台詞に本作の真髄を見た。
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