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ケメ子の唄のニューランドのレビュー・感想・評価

ケメ子の唄(1968年製作の映画)
3.7
☑️『ケメ子の唄』及び『愛の嵐の中で』▶️▶️
今回の故人を悼む企画でも、名作追慕から最も遠い2本。リアリティを殆ど欠いた、’60年代末から’70年代にかけての作らで、ひとつは加藤茶と当時は結婚すると思ってた小山ルミのデビュー作で演出家の方もそう。もうひとつは百恵に対抗して時折映画主演もして、強い芝居志向が堅く·その力演が空回りしてた桜田淳子主演作(のちに肩の力抜けて名俳優になりかけたが)であり、日活以外での当時新鋭注目株だった、関本·牧口·小平らと並ぶ小谷(『はつ恋』や·『ゴキブリ』『(草刈)若大将』S)に、見切りを着け始めた頃の作品の(確認の)再見となる。
『ケメ子~』は懐かしいヒット曲で山本直純のCM曲らも現れるが、使う俳優も若いのに絞ってなくて、中年も同ウエイトでご活躍?し、各々がそこを活気づける法螺的·かつ滑らかな世界が、相当に素晴らしい。仰角·俯瞰·アップ部分·内に入り込む移動·短いのの挿入·メインとの並行入れ·それらのタッチの、身体や衣装·仕草のうねりに入り込み、気負わず·コミカルさが圧巻。情況不自由·危険ちっともない自殺薦め合いや(バイク)決闘と決着らを極めて、間抜けな外見に合わぬシャープな本質を、スマートに描き抜く。実にひっかかりなく、まろやかで、実は画面の張り·詰め具合の格調·完成度も相当に高い。限界をスイスイ乗り越えてまた戻ってくる張りのない展開、それに執着もたいしてない、ニヒルよりも人間味あるキャラらが、その中で自由に。
行き詰まった、不動産屋とダンス教室主催者が、ゴーゴー名人のドライな娘を見出だし·みるみるスター化で、関連会社立上げ·生徒募集も、大成功。更なる成果へ、大地所を持つ大社長ゲットも、その愛人が、ダンス教師と腐れ縁と分かり·躓き、娘もアッサリTV脱退と続き、2人は元の木阿弥。
娘は、「昔の仲間から逃げてるわけではない。アフリカへ渡航、パラシュートで降り着いた所からスタート」という意中の男に付いて行ったのだか、降り行くそこはどう見ても日本光景。
戦前の山中·伊丹の末裔·雛形にも見えて、好み以上になかなかの才能と惚れたが、『寅さん』までピリピリしていた時代、洒落た作風にチャンスは続かないか。
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『愛の嵐~』は、’70年代半ばには年間ベストテンにも入れてた作家の作、少しはよく見えてこないかと思ったが、あまり救いはない。白坂の本が、橋本『幻の湖』に匹敵する位で、愛犬ならぬ、バレエ留学中の自分を支えてくれた、姉の突然の失恋自殺(らしい)の真相探ってゆく20歳の娘。偶然や危険が相次ぎ、姉が金の為、売ってた車の買主に次々、深く係わってゆく形に。自分ばかりか、相手がどうなろうが、一瞬思い入れるだけ。姉の堕落も分かってく。真相も実にイージーに分かり、アッサリ決着に。ヒロインの心は、それでも未来へ前向くだけ。
小谷は元々確たるスタイルを持った人ではなく、ピーク時跳ね舞った熱気でやってたが、この訳も分からない本には、それなりに投げずに丹念·溌剌に収めるだけ(3段アップや、画調変化や合成や、現代風合わせや)。しかし、驚きなのは、ヒロインを彩るどうでもいいようなキャラらに、俳優にらがケレンをそう感じさせず、衒いもなく真っ正面から演じきってる事。その事自体が奇怪だが、小谷の人徳か。故人のなった人が多いが、役を恥じず照れず、変に清々しい。植草、シロー、岸田、地井、邦衛、大林らをストレートに偲べる。
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