ちろる

friends もののけ島のナキのちろるのレビュー・感想・評価

friends もののけ島のナキ(2011年製作の映画)
4.0
私が子供の頃、紙が擦り切れるまで何度も何度も読んで、何度も何度も泣いた絵本『泣いた赤鬼』がROBOT✖️白組✖️山崎貴監督のゴールデンタッグで実現。

原作のファンなだけに、どんな風に脚色されてるのか、不安もありつつ恐る恐る・・・
まぁ、それも杞憂に終わる。
それもこれももののけ島に迷い込んだ可愛い幼児、コタケの存在に引き込まれ、鑑賞者の視点が、人間側から徐々にもののけたち側に移行させるのもお見事である。

見た目もこわーいもののけが、かわいらしい人間の幼児に振り回されて、だんだんとそこに愛情が育まれていくというパターンはピクサーの「モンスターズインク」でお馴染みですが、そんな本来なら交わるはずもない人間ともののけが戦うことも憎み合うこともまだ知らない無垢な存在によって、赤鬼ナキとコタケの2つの種族の橋渡しとなるのがこの物語の第一段階。
しかし、ここまでの部分は原作にはなくて、完全に脚色。
原作を知っている人ならばここから後のエピソードが切ないラストに続くもう一つの友情物語の始まりだと認識するのです。

さぁ、コタケを再び人間の住む島に戻すためにもののけ島の掟を破ってまでこっそりと島を渡るのはナキと、ナキの幼馴染である青鬼のグンジョー。
ナキは案の定、姿を見せるとその怖い見た目から人間たちから敵視されてしまうわけですが、もののけ島でさえも嫌われものだったナキが、コタケと出会ってから変わっていったこととても嬉しく思っているグンジョーは、ナキがこのコタケのいる人間の島でも居場所を見つけられるようにとある決断をする。
このグンジョーの犠牲的協力により、ナキは人間たちと交流できることとなる。
この辺は原作と同じとわかっていても、胸が締め付けられる。

ラストは泣いて泣いてたまらない想いになるはず。

内容を知っていても作品に引き込まれるのは、素晴らしい声優陣とCGアニメーションにある。
ナキは香取慎吾さん、こち亀の両さん風味のガラガラ声は元SMAPでアイドルしてたとは思えません。さすがです。
そしてグンジョーは大ベテランの山寺さん。
安定の素晴らしさで、物語の質を上げてくれる。
他にも阿部サダヲさんやYOUさんなどなど個性派な俳優さんによる声の演技が楽しめる本作。かなり豪華です。

そしてCGは、珍しくフルCG。
キャラクターデザインもお見事で、原作とはまた違う今風味の迫力のある鬼のデザインには圧倒。
中でもコタケのデザイン。
何もかもがまんまるくて誰もが抱きしめたくなるような暴れん坊。これを観た誰もがコタケに会いたい!と思ったでしょう。
美味しそうな天女ダケのビジュアルもお見事で、日本でここまでのCGできるのはさすがROBOTの白組だからなんでしょう。

最後に、原作では赤鬼が泣いたところで終わってしまうのですが、青鬼グンジョーがただ犠牲を払う存在にならないように、物語のラストにはグンジョーにも希望が見え隠れするラストを用意してる本作。
これは憎い伏線回収で、『泣いた赤鬼』で泣いた私たちのような大人にカタルシスを与えてくれるエンドとなっているのが素敵すぎました。
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