藤田武彦

トラフィックの藤田武彦のレビュー・感想・評価

トラフィック(2000年製作の映画)
3.1
【指示された職務を越える】
終盤まで、麻薬問題の現場を描いている。それが、ラスト直前になり、職務をどう越えるかという、言葉にできない生き方の問題に転換する。

転換点は、長官の記者会見。任命された職務を自ら辞し、娘1個人の命、QOL改善のために、身体を張って働きかける。赤外線のリモコンで車を起動する姿は熱い。

黒人捜査官も、一般人に身を隠した密売人に対し、令状が得られない中、身を投げ出して盗聴器を仕掛ける。屋敷を後にする表情は、本作の中で一番明るい。

ラスト、赤い光のもとで野球をする子供たち。彼らのためにある職務だが、指示された枠をこれからは越えるべきではないか。実はそんなことも呼びかけている映画です。


【今なんて言った?】
バスケットボールコートのゴリラ。バスケットの試合中に、ゴリラの着ぐるみがコート内に侵入しても、誰も気にとめないという。

あるシーン。
証人をかくまっている一室。ドアがノックされる。
「誰だ?」
「マフィアです」
中に入れる警官。何ごともないかのように会話を続ける。

これ、本作の中で本当に描かれています。
この後、証人には死がもたらされてしまいます。

「今なんて言った?」
この一言を発していれば、死はなかったのかもしれません(^^)
藤田武彦

藤田武彦