SANKOU

地下鉄のザジのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

地下鉄のザジ(1960年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ザジがパリの街を冒険する36時間の物語だが、とにかくドタバタな展開と異様にテンションの高い訳のわからない街の人達との交流が面白い。
早回しを効果的に使った演出や、カットの切り替えでまるでイリュージョンのようなシーンがたくさんあり、正直意味のわからない作品ではあるのだが、観ていて引き込まれるものはある。
ただ単に荒唐無稽なドタバタを描いているわけではなく、子供目線から大人の世界への皮肉も感じさせる内容で、何気に毒がいっぱいあるのが観ていて痛快だ。
未読だが、原作にある言葉遊びも活かされている感じがした。
地下鉄に乗りたかったのにストで閉鎖されていることを知り、エンエンと泣くザジに近づく変態なおじさんと、ノミの市を歩いたり、レストランでムール貝を食べた後に、用がなくなってあっさりとおじさんを巻こうとするザジが、おじさんと謎の追いかけっこをするシーンはかなり印象的だった。
ムール貝を食べていたら真珠が出てくるが、それをぽいっと捨てるザジが面白いが、そもそもムール貝に真珠があるものかと思ってしまった。
突っ込み出したらきりがないが、エッフェル塔をガブリエル叔父さんが詩を唱えながら登って、風船を持って地面に着地するファンタジーなシーンや、渋滞を抜けてボンネットも何もかもなくなった車でバスを追いかけるシーンなど、一度観たら忘れられない名(珍)シーンがたくさんある。
謎の色気を漂わせるアルベルチーヌ叔母さんのミステリアスな雰囲気も良かった。
後半の大乱闘シーンもこれでもかというほど意味不明なのが良かった。
結局地下鉄にも乗れなかったザジが、最後に母親と合流した時に何をやっていたか聞かれて「年をとったわ」と答えるのが、何ともいえない深みを感じさせた。
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