けーはち

暗殺のけーはちのレビュー・感想・評価

暗殺(1964年製作の映画)
3.2
司馬遼太郎『奇妙なり八郎』が原作の時代劇。将軍護衛の浪士隊を募り、土壇場で勅諚を得て尊攘派に転じた清河八郎(近藤、芹沢らが彼と袂を分かつのが新撰組の始まり)。幕府を騙したその手口から、司馬は彼を胡散臭い山師、雄弁と奇策を弄す食わせ者の梟雄として描いた。もっとも藤沢周平『回天の門』などで彼を時代の魁として評価する向きもある。いずれにせよ彼は幕末に波瀾を呼ぶ風雲児であり、丹波哲郎の演じる様子は司馬の造形にマッチする。また劇中登場人物の様々な回想・証言によって、文武両道のカリスマ、人斬りの剣客、幕府に怒りを抱き皮肉っぽく政治を語る情のある男、「清河幕府」と自称する出世主義の俗物、など矛盾に満ちた多面的な描写がされて行く様相はまさに清河八郎らしさである。だが、情報量の多い話を全体的にサクサクと地味に描きすぎ右から左へ通り過ぎてしまった感はある。ちなみに彼の妻・お蓮は岩下志麻で当時は極妻の片鱗も見せずビックリするほど可憐。