Habby中野

僕らのミライへ逆回転のHabby中野のレビュー・感想・評価

僕らのミライへ逆回転(2008年製作の映画)
4.5
インターネット、スマートフォン、電子書籍、データ配信、SNS、自動運転、新築のビル。
文明は発達し、社会は常に「便利で、新しいもの」を求める。確かに、自分にフィットする、新しいものを手に入れる快楽は理解できる。
しかし。新しいものはいつも過去のネガティヴな部分を強調するが、ちょっと待て。そこには確実にそれが存在した事実、存在した理由があるのではないか。タンクローリーで押しつぶしてきたのは、本当に悪だったのか?
「僕らの未来へ逆回転」というセンスない邦題は、しかし「未来」という語を使うことで強烈にこの映画の大切さを言い当てている。未来へ進むことは、ローラーで潰し続けることではない。転がる石は確かに苔生さないが、踏みつけられた者たちを忘れるな。社会はもはや人を操り進歩を続けるが、人々の魂は決してそれを忘れない。
仰々しく立ち上がるのでも、声を高々と上げるのでもない。ただ、進むことに疑いを持ち、潰し消されようとするものの大事さを抱きしめる。過ぎる時にしがみつき無様にもがく人々の姿が本当の映画になるラストシーン、いや実は冒頭からだ、そう巻き戻してまた観たくなるようなこの映画は、過ぎた時間に精一杯の誠意を語る、本当に素晴らしい、全てに灯る魂の作品である。どんな未来へ行っても、この愛だけは忘れてはならない。
Be kind rewind(巻き戻してお返しください).心ある映画に乾杯。魂も。

P.S. 愛を込めて、Fats Wallerのレコードを買いました。
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