このレビューはネタバレを含みます
既視感に次ぐ既視感は、心の原風景……なんてものではなくてただ焼き回し的な弱いストーリーによるもの。あまりに現象的で、台詞過多で、平面的なアニメ。でも世界の広さを知ること─打ち上げ花火、上から見ること─や”電話”の伏線回収、そして繰り返し描写される”足下”への意識は局所的に良かった。世界のとんでもない広さに目を向けながらも、この地面に足を取られ、それでも踏ん張って、地を駆ける。不器用なストーリーから目を離してそれらだけを見ると、生きることをそのまま写した見事な表現にはなっている。そしてついに拾い切ることができなかったカメラについての示唆も尊くテーマ的だった。
”誰にも気づかれなかったはずの この世界の隅っこで起きたほんの小さな物語を ここに刻みつけることができるの
自分が全身で感じたこの世界が 確かにここにあったってことを 誰の目にも見える形で証明してくれるんだよ それってすごいことだと思わない?”
広い世界とこの小さな存在。その足下にある地面。それがこの世界を象っている。いくら広くてもつながっている。