1人の外科医の生き様を描いた医療ドラマ。
原作は大鐘稔彦医師の小説。
成島出が監督を務め、堤真一が主演、夏川結衣、吉沢悠、柄本明、中越典子らが共演。
地方のさざなみ市民病院に一人の外科医・当麻医師(堤真一)が赴任する。丁度その時、救急車で盲腸と診断された患者が運ばれてくる。対応できる医師が誰もいなかったので当麻が急遽エコーで診てみると、盲腸ではなくヘパトーマによるラプチャーであることがわかり、緊急オペを実施して事なきを得る。ある日、市長(柄本明)が市議会での答弁中に肝硬変による食道静脈瘤破裂で倒れて救急搬送されてくる。一時的に一命は取り留めたものの肝移植をしないと助からない。親族による生体肝移植ができないことが明らかになり、残された唯一の救済手段は脳死肝移植だけだった。そんな折、交通事故で頭部外傷脳挫傷の17歳の少年が病院に搬送されて来る。その後、少年は脳死判定され、母親は少年の臓器を使って他の患者の命を救ってほしいと懇願する。しかし移植の成功確率は50%しかなく、わが国の法律では脳死肝移植は認められておらず、当麻は警察から殺人罪として告訴される可能性があると忠告される....
「外科にとって大切なのは 目に前に苦しんでいる患者を救うことだよ」
「助かりたいと願う患者と 命をつなぎたいと望む 脳死患者の家族が 今ボクの目の前にいるのです そしてこの人たちの悲痛な思いがある それを無視してオペをしないなら ボクは医師じゃない 自らメスを置きます」
目頭が熱くなる重厚なヒューマンドラマが展開される。
堤真一が孤高で地味な医師を渋く好演している。個人的には、本作は堤真一を好きになったきっかけとなった作品でもある。
実際の医療現場では本作以上にシビアな事件が度々起きている。
わが国ではことなかれ主義で立法が先送りされ、それゆえに法的、社会的に糾弾された医師が少なくない。
わが国で助かる患者の命や患者思いの高い志を持った医師が次々と失われていく現状が残念である。
終盤のセリフが過去形なのが重くのしかかる。
「君は、素晴らしいナースでした」
2024.8 NHK BSで鑑賞(プレミアムシネマ)
第34回 日本アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞を受賞(2011年)