「ゴジラ」(1954年)、「ゴジラの逆襲」(1955年)には、まだ「戦争の影」が濃厚に残り、暗い印象を受ける傑作でした。
しかし「逆襲」からわずか7年後の本作には「戦争の影」は微塵も感じられない。少なくともこの映画には「疎開」という単語以外は「戦争の影」は描かれていません。それどころか「もはや戦後ではない。」
ここに描かれるのは疾風怒濤の「明るさ」であり、この映画最大のモンスターは高度経済成長。そして人間。それを象徴するキャラクターが、有島一郎熱演怪演珍演のパシフィック製薬宣伝部長であることは言うまでもないでしょう。
キングコングのスポンサーになって、「どの新聞もキングコング!キングコング!キングコングだ!ワハハ!」「宣伝に『もういい』はないっ!」
社員が冗談で言った「キングコングとゴジラ、どっちが強いのかしらねー。」の言葉には「そのアイデア買った!キングコング対ゴジラだっ!」
ゴジラやキングコングでさえ、視聴率獲得や、大企業の宣伝道具に使う。怖いものなし。
何しろパシフィック製薬のライバルがセントラル製薬。そんな大型コメディの大快作です。いや、ブラックコメディかなこれは。
まったく、この宣伝部長を主役にしたスピンオフ・シリーズを観てみたかった!
追伸1
「ゴジラの逆襲」から本作までは、私は幼少のミギリというやつだったのですが、当然のことながら、世の中どう変化していったかなんて、覚えているわけもありません。
たしかに本作からは戦争の影は感じることはできませんが、家の近くにはさびついた高射砲跡があったり、駅の地下道には傷痍軍人がいたりしましたね。
近所に防空壕と呼ばれた穴もあったりしたけど、あれはほんとに防空壕の跡だったのかな?でも防空壕と言われて子供も理解できる時代でした。
そして本作公開の翌年。あのケネディ大統領暗殺事件のニュースはハッキリ覚えています。
追伸2
東宝は同年、世界のクロサワで三船敏郎対仲代達矢の「椿三十郎」も作っている。そしてこちらは世界のホンダ(車じゃない)で「キングコング対ゴジラ」。
すげえ!