義民伝兵衛と蝉時雨

地獄に堕ちた勇者どもの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

地獄に堕ちた勇者ども(1969年製作の映画)
4.5
ナチズムの台頭。第二次世界大戦への緊迫感漂う1930年代前半のドイツ国内。権力欲、支配欲、謀略、粛清、屈服、憎悪、報復、”力への意志”の飽くなき闘争は内外明けても暮れても。激動していく時代。そんな貪欲な権力闘争は家庭内にも及び、ナチズムの台頭によるドイツ国内の権力勢力図の変化は、均衡が保たれていたとある財閥一族の家族関係をも蝕んでいく。激変する時代に翻弄され退廃していく財閥一族の模様を通して描き出されるナチスドイツ国家の狂気の実態。人間の権力欲の悍ましさや、第三帝国の病的な社会の気風が、毒々しくも耽美な演出で見事に炙り出されている。彼岸花の様な幻想的な照明の鮮烈さは特に印象深い。ヴィスコンティ監督はやはり光の魔術師だ。緊迫感漲る音楽も尚も悍ましさを盛り上げる。俳優陣のゾクゾクするほどの名演技も見応えが凄まじい。マエストロ・ヴィスコンティの指揮の下で各要素が一丸となって奏でる耽美なデカダンの旋律の悍ましさに震え陶酔した。