2011年の韓国映画。ろう学校野球部の実話を基にした感動の物語。
聴覚障害者学校の野球部と、そこへ臨時コーチとして派遣されてきた国民的スター投手が共に全国大会を目指す。題材からしてすでに感動を予感させるが、丁寧に描かれた面白味のある人間ドラマと、実話をベースにした誇張しすぎない現実的な話とで、期待以上の非常に良い作品であった。変にお涙頂戴な話にせず、スポーツが持つ感動要素をそのままストレートに響かせているのが素晴らしい。
ろう学校の校長は野球部の活動に否定的だ。それがハンデを持った彼らに何の役に立つのか、社会に適応出来るよう教育することが重要じゃないかと。それでも顧問の教頭と女性教師は必然性を説く。そこへやってくるのが問題児のスター選手。野球への情熱が人一倍高い彼は、聴覚障害の生徒たちであっても特別扱いしない。全力の指導に生徒は感化され、心を開いて真っすぐに野球に打ち込んでゆく。ハンデがあるからと特別扱いすることが、逆に彼らの生き方を狭めるのだと。確かにそうだなと頷ける。
国民的スターの野球選手でありながら、不祥事を度々起こす問題男を演じるチョン・ジェヨン。改めて良い俳優だなと思った。やさぐれた男っぷりで前半は笑いを誘い、それでいて国民的野球選手にもしっかり見える。彼の演技力とカリスマ性が存分に発揮されており、それは作品の中盤から観る側をさらにぐいぐいと引き込んでゆく。聴覚障害を持った野球部員を演じた者たちの熱演も見事だった。全員が野球と手話の猛特訓をしたのだとか。それによる説得力が半端ない。その真剣さが作中からひしひしと伝わってくる。女性教師を演じたユソン、主人公のマネージャー役のチョ・ジヌンの熱演も作品を盛り上げる。恋愛要素や旧友との男の友情を描いた点でも本作は見応え十分だ。
普通の高校野球ものとしても感動出来ただろうが、そこに障害についてのテーマ性を絡めた描き方が見事だ。泣ける感動作だが、それが単なるお涙頂戴な安っぽさでもない。現実を基に、そこから生まれる感動のドラマを丁寧に見せている。練習試合のエピソードが特に良かった。コーチの言葉がめちゃくちゃ熱い。こういう作品を観ると心が洗われる。良い映画だった。