暮色涼風

ヴァンダの部屋の暮色涼風のレビュー・感想・評価

ヴァンダの部屋(2000年製作の映画)
3.8
ドキュメンタリーなんて嘘だろ、というようなドキュメンタリー。
演出しまくりでしょと疑ってしまう。
いや今でも疑っている。
構図が良いところにバシッと決まっていて、来て欲しいところに人が来て、被写体の人々もカメラに対して無意識すぎで、聞いてもないのに欲しいエピソードを語り出す。
登場人物が道を歩いていくショットも、フレームインからアウトをフィックスで撮っているということは、カメラが最初からそこに用意されていて、回してから「はい、歩いて」となるわけだから、間違いなく演技演出も含まれている。
これは劇映画だと信じたい。

ほとんどの画の光と影との割合が、1:9から4:6。
暗闇がほとんどを占めている。
それはドキュメンタリーでライティングを作り込まないからという理由だけではなく、一貫性があることから、そのように演出しているのだと解る。

不衛生で、日の当たらない世界で、薬に依存し、それでも彼女たちはこうして生きていくことしかできない。
観客にとっては忍耐が必要な、退屈で苦痛の長い長い3時間が、彼女たちには日常で、現実で、そのクソみたいな居場所で凌ぐしかないのだろう。
その劣悪な環境が、開発工事により壊されていく。
追い出された後はどうなってしまうのか。その後が気になった。
暮色涼風

暮色涼風