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ヴァンダの部屋のbennoのレビュー・感想・評価

ヴァンダの部屋(2000年製作の映画)
4.5
とても観たかった作品…。

ペドロ・コスタ監督の初期3部作を鑑賞したのも今作が観たかった為…3作目の『骨』に出演したヴァンダという女性を捉えた作品…。


こんな映像体験は初めてです…レビュー泣かせの作品っ…兎に角圧倒されました…。


リスボンの捨てられた街…
その街が消えようとしている…
麻薬に溺れる捨てられた人達…
それでもこの街に生きている…



取り壊されつつあるスラム街の住居…そこに住むヴァンダ…彼女の部屋を中心に彼女と周りに住む人々の日常を捉えたドキュメンタリー…。

監督自ら2年間に渡って一緒に暮らす中で捉えた過酷にして絶望的な状況…《究極のデカダンス》です…。

ストーリーはありません…時間経過の感覚も無いのです…映し出されるものは…スラム街のジャンキー…それが3時間…。

ベッドひとつのヴァンダの部屋では、妹と昼も夜もクスリに勤しみます…アルミホイルを炙って化学物質を吸い込み、異常な程むせて咳き込み、挙句に嘔吐…その行為の繰り返し…たまに金欠でレタスを売りに出かけます…。

瓦礫とゴミと汚れ…その中で費やされる無為の時間…絶望的でどうしようもない場所にも拘らず…それでも彼らは自分たちなりに生きています…。


そしてその映像に圧倒されます…決して綺麗ではなく…美しい…!! 確実に言葉足らずですm(=_=)mス、スビバセン!!

バロック期の絵画のような、暗闇の中に浮かび上がる輪郭…闇の中のフェルメール…その映像に陶酔です…。

スラム街に差す美しい光とパンクな破壊の音響…。

圧倒されるのは…カメラが一切動きません…まさに画集を一頁ごと捲るような感覚…被写体がフレームから外れても、決して追いかけることはなく…空間の感覚をありのまま伝えます…フレームの外から聞こえる怒鳴り声や子供たちの笑い声に《生》を感じます…厳しい暮らしの中、みんなそこで生きてるんだなぁ〰︎。


そしてラストは唐突に…。

無音のエンドロールの中、色んな思いが駆け巡ります…。

とても圧倒されました…が、万人受けする作品では無いので…おススメは出来きないです꜆꜄꜆
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