オトマイム

影のオトマイムのレビュー・感想・評価

(1956年製作の映画)
3.6
ヒッチコックと同じ時代のポーランドのミステリ・サスペンス。ふだんミステリをあまり観ないせいか私は理解に難儀して2度観たけれど(^^;)面白かったです。

ひとりの男が列車から飛び降りて死ぬ。この事件から波及し、3つの異なる未解決事件が回想される。全く別々の事件には共通するひとりの男の影があった。

歴史的背景をすこし記しておくと、本作は

①現在(1950年代前半)…スターリン主義時代
②大戦中(1943年)…ドイツとソ連に分割されていた亡命政府時代。地下組織が多くあった
③大戦直後(1946年)…共産主義の新生ポーランド時代。多くの反政府ゲリラグループが存在した混乱期

この3つの時代から構成される。
このような激動の時代にスパイの存在は必然であり、生々しいスパイ映画として興味深いものがあるわけです。あの男怪しいぞ…って早々に感じるので、ミステリというよりは、歴史サスペンスとして面白い。

特に③時代の話は秀逸。いくつもの棺を運ぶ兵士たちが襲われての銃撃戦。身を偽りスパイとして侵入した敵方陣地での緊張感。

この監督の作品は3本観たけれどいちばんわかりづらかったですね。政治的背景が絡めてある点も異色かもしれません。