イワシ

聖山のイワシのレビュー・感想・評価

聖山(1926年製作の映画)
3.9
タイトルに反し波濤砕ける海辺の岩場でのレニ・リーフェンシュタールのダンスから始まる冒頭は実験映画的。波と官能的に戯れるヒロインとは対照的に彼女をめぐる二人の山男は雪と氷に苦しめられる。驚くのは後半の登山シーンで常に起こる軽い雪崩がまるで滝のように見えること。雪崩はリーフェンシュタールにも襲いかかり、完全に生き埋めにするのでビビる。

ナント北壁に挑むクライマックス、登頂が順調な場面では岩肌を掴む手(素手!)のクロースアップが挿入されるが、フェーン風が到来し吹雪が激しくなってくると足がクロースアップされるようになる。岩肌に引っ掛かるスパイクが落下を予感させるが、決定的な滑落の瞬間は踵がサスペンスを喚起する。

ドキュメンタリー的なスキー競技の場面はジャンプと長距離レースの二種目があり、特に後者は雪景色をなめらかに移動する集団の運動が素晴らしい。だが最も目を奪われるのはトーチを片手に遭難者を捜索する救助隊のスキー。夜と光と煙と風と雪と滑走が混淆する画面の圧倒的な艶。
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