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ディアボロス 悪魔の扉のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

ディアボロス 悪魔の扉(1997年製作の映画)
4.0
フロリダ州の若手弁護士ケヴィン(キアヌ・リーヴス)は法廷での無敗記録を伸ばし続けていた。妻のメアリー・アン(チャーリズ・セロン)らと祝杯をあげていたケヴィンはNYのミルトン法律事務所からスカウトされる。事務所の社長ジョン・ミルトン(アル・パチーノ)に見込まれたケヴィンは役員待遇で迎え入れられた。世界を相手にビジネスをしている活気のある事務所、用意された豪壮なマンション、都会的な洗練された隣人たち。若い夫婦の未来は明るいかに見えた。事務所の上得意である不動産王アレキサンダーが妻と子どもを殺害した容疑で逮捕された。ミルトンにこの件をまかせられたケヴィンは裁判の準備に忙殺されて家に帰れない日が続く。メアリー・アンは慣れない都会での孤独のためかしだいに精神に変調をきたす。愛妻家だったケヴィンも野心に我を忘れ、妻の看護のためにしばらく休職してもいいというミルトンの誘いを断って仕事に邁進する。メアリー・アンを心配してNYにやって来たケヴィンの母親はマンションでミルトンとすれ違った時に何かに気付くが固く口を閉ざす。ケヴィンの同僚の妻たちは実は悪魔だと言ったり存在しない自分たちの赤ちゃんに子宮を奪われる夢を見たりとメアリー・アンの精神は確実に病に蝕まれていく。そしてケヴィンも彼女を抱いている最中に同僚の弁護士クリスタベラとセックスしている幻を見るなどどこかおかしくなっていた。そんな中、弁護士のエディ(ジェフリー・ジョーンズ)がジョギング中にホームレスに撲殺された。彼は出世できない腹いせに事務所ぐるみの国際的不正を暴露しようとしていたのだ。そのことをケヴィンに伝えようとしたFBIの捜査官も彼の目の前で自動車に轢かれて死ぬ。ケヴィンは裁判を前にしてアレキサンダーが罪を犯していることを確信し、その苦悩をミルトンに打ち明けるが彼は「ついに黒星か」と言うだけ。虚栄心に惑わされたケヴィンはアレキサンダーの秘書に偽証をさせて勝訴する。帰宅したケヴィンを待っていたのは切り傷だらけの身体でミルトンにレイプされたと泣き叫ぶメアリー・アンだった。彼女は精神病院に運び込まれ、目を離した隙にケヴィンの目の前で自殺する。さらに駆け付けた母親にミルトンがお前の本当の父親なのだと告げられたケヴィンは彼が全ての元凶だと確信しオフィスへと向かった。果たしてミルトンはケヴィンに世界を征服しようと持ちかける。そのためには異母姉弟のクリスタベラと子供を作り悪魔の血筋をさらに濃くしなければならない、と。ケヴィンはミルトンに魂を売渡したかに思わせておいて持参した拳銃で自らのこめかみを撃ち抜く。一瞬にして積年の野望が崩れ去ったミルトンはその醜悪な素顔をさらけ出すのだった。……気が付くとケヴィンはフロリダ州の裁判所にいた。今までのことは白昼夢だったのだろうか。彼は猥褻教師の弁護人を降り、初の黒星にもかかわらず清々しい顔でメアリー・アンと帰路につく。英雄的行動をとった彼にロングインタヴューを申し込んだ新聞記者がいた。「虚栄心は人を惑わすからな」とひとりごちる彼は顔を変えたミルトンだった。
この映画でユニークなのは、人間を堕落させ悪に落とし魂を奪う悪魔の表向きの商売が、弁護士であるところ。依頼人を無罪にするために、嘘や隠蔽など金と名声のために悪魔に魂を売る。
ケヴィンは、最初は金と名声のために有罪と分かっているセクハラ教師を無罪にするために原告を誹謗中傷したりして名声を追いかけ、ミルトンの法律事務所にスカウトされてからさらに手段を選ばず悪行に手を染め最愛の妻メアリーアンを置き去りに仕事に邁進するけど、メアリーアンが心を病み悲劇が起きた時、ケヴィンが大事なものに気づくまでの葛藤は、現代的な善と悪の相克を象徴している。善と悪の相克に苦しむ有能な弁護士ケヴィンを熱演するキアヌ・リーブス、悪魔的な魅力のアル・パチーノが、印象的。
シャーリーズ・セロンは、徐々に病んでいく演技は、良かった。
「虚栄心は私が最も好む罪だ」
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