たむランボー怒りの脱出

世界の始まりへの旅のたむランボー怒りの脱出のレビュー・感想・評価

世界の始まりへの旅(1997年製作の映画)
4.5
これは今までに観たオリヴェイラ作品の中では一番良かった。

自動車という親密な空間のなかで交わされる会話と、時折インサートされる後部座席から見た風景。
この延々と遠ざかっていく風景を撮ってるのは『歴史の授業』のレナード・ベルタらしい。納得。
『歴史の授業』のときの無機質さとは違って情緒が出てる。

オリヴェイラのモンタージュがどこか奇妙に思えるのは、それが「基本的」すぎるからだという気がする。
切り返しにしても、良い意味で何のひねりもなくて「単なる切り返し」で、ただの切り返しでしかない。
それが逆に異質というか、普通ならそこで作家は工夫して基本を崩そうとするのだが、そこをあえて崩さないみたいなところがある。

この映画の序盤の海辺での会話シーンはほとんどが切り返しのみで構成されている。
あ、でもよく考えたらここでの切り返しは最後にちょっとひねりがある。変化球的な切り返し。
この唐突なひねりに心を掴まれた。

マストロヤンニの遺作だが、今まで観たなかで最もキュートなマストロヤンニを拝めます。