mimocyan

ミルドレッドのmimocyanのレビュー・感想・評価

ミルドレッド(1996年製作の映画)
3.7
「私の中のあなた」「きみに読む物語」の
ニック・カサヴェテス監督の長編デビュー作。主演は母親でもあるジーナ・ローランズ。

社会的な役目を立派に果たした女性が、新たな人生のテーマを見つけていくまでの物語ですが、その起伏がささやかな日常のなかで生まれてくるのがとても好印象。
向かいに住む問題あり夫婦の子供JJを善意からあずかることになり、そこから話がはじまります。
おとなしいJJをかいがいしく世話しながら、自身もそれを楽しんでいるところは、大きな包容力と彼女の優しさがとてもよく表れてて、すごく微笑ましい。
彼女には彼女で、いい歳になりながらも定職につかず、親から逃げるように家を飛び出した娘への心配があったりするんですが、その娘のアニーの気持ちもよくわかるんですよねー。そんな娘に対しても、寛大な気持ちで接するミルドレッド。家を飛び出したことに対しても、無謀ではあれひとつのステップなんだと受け入れてる。このへん、自分の母親とモロにダブってきて、あぁ…もうあの時はごめんなさいって軽く懺悔したくなりました…(汗

JJの母親モニカを演じるのはマリサ・トメイ。まさにという感じの若いビッチママぶりがぴったり。彼女もまた、ミルドレッドとの繋がりによって変化を経ていく。出ていった夫への葛藤に対しても、ミルドレッドは「愛の芽を摘んではだめよ」と優しく諭す。
また、モニカの繋がりで知り合うことになるほのぼのとしたトラックの運ちゃん役で、フランス映画ではお馴染みのジェラール・ドパルデューがふつーに出てきて、あれ?wと。 これ、なんか意外だった。

ただの隣人を越えて育まれていく幸福な関係。「JJは私の一番の親友」という言葉が素敵。が、しかしその矢先、モニカの元へ夫が戻り、一家が順調な生活を送り始めると、再び彼女は居場所をなくしてしまう。
JJにとっても、モニカにとってもそれは喜ばしく、素晴らしいことなのだけど…。その幸せの影に隠れてしまったミルドレッドの姿が切ない。

ここから、ミルドレッドがどういう選択をしたのか…。
親として、人生の先輩として人に与えるられるもの。そしてこれからも続いていく自分自身のこと。
歳を重ねていくことについて、いろいろと考えさせてくれる良作です。
ラストシーンの背中が素晴らしくかっこいい。
mimocyan

mimocyan