つらいときにはライカを思い出す。スプートニク2号に乗って宇宙に旅立ったライカ犬を。星空を見て思いを馳せる。犬のこと。ママのこと。人生のこと。
たいせつに仕舞われていた思い出をとくべつだよ、と見せてもらっているようで、ずっと息を潜めて観ていた。涙は流れなかったけれど心の中でずっと雨が降ってるみたいだった。やさしい雨。そして時折晴れ間がのぞく。スウェーデンの澄んだ空気ににじむようなひかり。すこしくぐもった空も、庭のあずまやも、子供たちのいたずらも、大人も子供もみんなで大笑いするいくつかのシーンも、まるごと愛おしくてたまらない。監督の目はどこまでもやさしい。大きなブランケットで彼らをそっと包みこんでいるようだ。つらいものを見なくてすむように。悲しいことをなるべく思い出さずにいられるように。素敵な思い出だけを残せるように。
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映像があまりにきれいなので調べたら撮影監督は『みじかくも美しく燃え』『ウィズ・ユー』『スウェーディッシュ・ラブストーリー』を撮ったイェルン・ペルションという人だった。やはり映像が美しいといわれるスウェーディッシュは未見なので今度観たいと思う。