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怪談のピッコロのレビュー・感想・評価

怪談(1965年製作の映画)
5.0
怪談という日本文学

※どれも有名な怪談話なので、このレビューにはネタバレが含みますのでご理解ください。

「黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中」の4つの怪談話を映画化したオムニバス作品。
上映時間も3時間越えの大作である。
ホラーというよりも日本文学を知る作品といった方が正しい。
この時代の日本映画はいいですね。
作品自体が完璧すぎて言うことなしです。

黒髪
貧しい武士の男は、妻を捨てて良い家柄の娘と結婚する。しかし、その娘はわがままで冷酷な女だったため、前の妻のことを思い出すようになる。
そして任期を終えて前の妻のいる家に帰るが・・・・。

BGMが不気味で心地いい。ところどころ無音になる演出も恐怖感がでて気持ちいい。前の妻が美しくて、まるで夢の世界にいるような感じ。
終盤、次第に髪の毛が抜け落ち、顔も老けていくシーンは圧巻。
どんなに貧しくても、その愛を信じるべきだった。

雪女
森へ薪を取りに行くが吹雪にあい、帰れなくなる二人の男。その夜、雪女がもう一人の男を凍死させているのを目撃する。雪女は「今夜見たことを誰にも話してはいけない。もし話したらお前を殺す」と告げ消えていく。
そして時は経ち、男の前に一人の女が現れる・・・・。

これは、有名ですね。
多分、ほとんどの人が知ってるんじゃないでしょうか。
言ってはいけない事を言ってしまったお話。
雪山の風景や夕焼けの風景が美しい。セットなのは見たらわかるけど幻想的です。雲が目玉になってたり、その発想が面白い。
約束したんだから、絶対に守りましょう。嘘はダメだよ。

耳無芳一の話・・・
盲目の琵琶法師の芳一は、ある夜、彼の前に現れた甲冑姿の男に「高貴な人に琵琶を聴かせるために迎えに来た」と言われ、ある場所に連れていかれる。芳一はそこで『平家物語』の壇ノ浦の合戦のところを琵琶で奏でて唄う。しかし、この男たちの正体は・・・・。

これも有名ですね。4本の中で一番観たい作品でもありました。
怨霊たち、耳、体全部に般若心経など映像化したらどうなるんだろうと興味津々でした。

4本の中で一番上映時間が長く、かなり丁寧に作られています。
こりゃ、すげー。完成度の高さに驚きました。
何度でも言います。こりゃ、すげー。

物語は壇ノ浦の合戦から始まりますが、もうこの時点で凄い。
無残に散っていた魂たち。これが後半、重要になってきます。

天国か地獄かわからない場所で琵琶を弾くシーンが不思議な世界観で印象的。
そして、体中に般若心経を書くシーン、耳が引き千切られるシーン。
全てが、想像した通りの画になっており驚愕しました。
このお話だけでも観る価値ありです。
全部書いてたと思ったらオチョッコチョイのせいで痛い思いをした話。

茶碗の中
結末のないお話として紹介されます。
茶碗の水に見知らぬ男の顔が映っているのに気付く。水を入れ替えたり茶碗を変えたりしても同じ男の顔が映っていた。気味が悪いが、男の顔が映った水を飲み干してしまう。その夜、一人の若侍が現れ・・・・・。

人の魂を飲んだ者の末路はどうなるのかというお話。
この物語を作った作家自体が結末がないお話として書いて姿を消してしまう。
しかし作家の家にある水瓶の中を覗くと作者が映り、手招きをしていたのである。こっちにおいで・・・。
なんとも奇妙な話である。


どの話も、面白く3時間があっという間でした。
この映画の雰囲気もいいので興味があれば一度は観てみるといいかも。

怪談という不思議な言葉。この言葉を聞くと何故か見てしまう。
人間は好奇心あふれる生き物。
それが、手を出してはいけないものだとしても・・・・・・。

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