あんがすざろっく

ロッキー・ザ・ファイナルのあんがすざろっくのネタバレレビュー・内容・結末

ロッキー・ザ・ファイナル(2006年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

これぞ、完璧なエンディング。

前作「ロッキー5」から16年、まさかのタイミングで届いた、「正統な」完結編。

結構話題になってもいいはずなのに、もっと拡大公開してもいいはずなのに、封切劇場が極端に少なかったことに唖然。

それでも友達と二人、「いや何が何でも劇場だろう⁉️」と、初日に映画館へ足を運んだ訳です。
思えば、「ロッキー5」を劇場に一緒に観に行ったのもコイツだった。
ロッキーは友を呼ぶのだ。

さぁ、今回はストーリーの核心に触れなければ、レビューがあげられません。
ガッツリネタバレ入ります。
これからご覧になられる予定の方、お気をつけ下さい。






ロッキーは引退後、フィラデルフィアでイタリアンレストラン「エイドリアンズ」を経営していた。
店名を彩る愛妻は、既に他界してしまっている。

息子ロバートは成人して独立しているが、ロッキーとはなかなか顔を合わそうとはしない。

エイドリアンの命日、ロバートは墓参りにも顔を出さず、ロッキーはポーリーと二人、思い出の場所を巡る。

ロッキーはエイドリアンの面影を忘れられず、過去を生きていた。

「俺には過去は宝物だ」とロッキー。

ポーリーが応える。
「俺にとっちゃ過去はゴミだ‼︎過去には何もねぇ‼︎お前は妹を大切にしてくれたが、俺は妹にとっちゃひどい兄貴だった。過去はもう忘れたい。」


同じ頃、世界ヘビー級チャンピオン、ディクソンも悩み続けていた。
試合では無敗を誇り、圧倒的な強さを見せるも、あまりの強さ故、人気が出ないのだ。

そんな折、テレビの中のヴァーチャル試合で、ディクソンと現役時代のロッキーの対戦が組まれる。
コメンテーターの意見は二分するが、
コンピューターはロッキーのKO勝ちと判定。
これを見たロッキーは、自分の中に再び闘志が燃えたぎるのを感じた…。
自分はまだ、ボクサーとして生きたい。

プロボクサーとして復活する為に、一度失ったライセンス発行を審議してもらうが、協会メンバーは「良心的見知」から、発行は却下される。
ロッキーももう50歳半ば、今からボクサーに戻るのは、自分の利益にはならないし、ともすれば命にも関わってくる。
しかし、ロッキーの情熱と熱弁に負かされ、最終的にロッキーはプロボクサーとして認定される。

本人としては地元で地味に活動していくつもりだったが、思わぬ形でディクソンとのエキシビジョンマッチの話が舞い込む…。





本作で一番驚いたのは、既にエイドリアンが他界していること。
エイドリアンがいないのに、ロッキーは大丈夫なんだろうか、と本気で心配になります。
確かにロッキーはどうしたってエイドリアンを忘れられません。
周りの人達に支えられ、内に秘めた思いを再び燃やし、ロッキーが前を向いていく物語。

撮影中エイドリアン役のタリア・シャイアは新撮の声がかからず、直談判までして参加したかったようですが、その願いは叶わず。
スタローンともしばらく口を聞かなくなったようですが、完成した作品を観て、その意味を納得したようです。
エイドリアンの不在がいかに大きいものか、ロッキーにも観客にも伝わってきたからです。


そして撮影時、既に55歳となっていたスタローンの鋼の筋肉。
これは凄いです。
結果から話してしまえば、ロッキーは再びリングに上がる訳ですが、その闘志と気迫は、言葉では言い表せない迫力。


今回印象的なのは、父としてのロッキーと、息子ロバートとの関係。
パート5の時のような、思春期の頃のわだかまりはないものの、社会人になってから、ロバートは父の影に悩まされることになります。
常に父と比べられ、職に就いても「親の七光り」と揶揄されます。
父の周りにはいつも人集りができ、それを目にする度に、父の偉大さと自分の無力さを痛感してきました。

50歳を過ぎてからのボクサー復活、現役チャンピオンとの対戦を公表する段に入って、いよいよロバートは胸にしまい続けてきた思いを父にぶつけます。
周りのみんなの笑い物だ、僕まで笑われる‼︎

しかし父は、人生ほど辛いパンチはない、今の自分の弱さや不遇を人のせいにするな‼︎お前はそんなことをする卑怯者じゃない、と息子に諭します。
あぁ、あんなに口下手だったロッキーが。
長い人生で、色々経験したんでしょう。
ロッキーは、スタローンの写し鏡なんですね。

息子のロバート役は、前作に続いてスタローンの実子セイジ・スタローンが演じる案もあったようですが、今回の内容から、敢えてキャスティングを変えたようです。
でも本作でロバートを演じたマイロ・ヴィンティミリアは、スタローンに雰囲気も似てて、良かったと思います。
ちょっとダーモット・マローニーにも似てる。



現役チャンピオン役のディクソンは、実際のプロボクサー、アントニオ・ターバーが演じて、実力と人気の板挟みで葛藤する姿を見せます。
ただ、今までのアポロやクラバー、ドラゴに比べると、どうしても魅力に欠けるんだよなぁ。



本作でもう一組重要なポジションを担ったのが、
リトル・マリー親子。

このリトル・マリー、実はパート1でタバコを吸っているところをロッキーに見つかり、お説教を喰らいながらも家まで送ってくれたロッキーに「くそったれ‼︎」と悪態をついた少女。
この彼女が大きくなり、今も地元で暮らしていたのです。
女手一つで息子のステップスを育てるリトル・マリーを、どうしてもロッキーは放っておけません。
この親子との繋がりも、ロッキーの新しい生き方を後押しします。

また、パート1にロッキーの対戦相手として登場したスパイダーが久しぶりに姿を見せ、カーマイン神父に代わって試合前にロッキーに祈りを捧げます。

ロッキーとアポロをコーチし続けてきたデュークも健在。
今のロッキーとディクソンの差を踏まえた上で、
確実にリングで闘えるトレーニングを考案していきます。


そしてなんと言っても、これまでのエイドリアンのポジションを引き継いだのが、ポーリーです。
ロッキーがトレーニングするシーンでも、常に後ろにポーリーがついています。
ここぞと言う時に、ロッキーを鼓舞します。

「倒されると分かっている相手にぶつかっていくのはしんどいぞ。
だが、お前ならやれる」




パート5は別として、ロッキーは常にリング上で声援を全身に受けています。
ですが本作では勝敗が決まる前にロッキーは「家に帰ろう」とリングを降り、ロバートやポーリー達と、退場していくのです。
(エキシビジョンとは言え)ロッキーは勝敗がどうであっても、彼は全てを出し尽くしました。
そして勇退していく後ろ姿をカメラは映します。

あっ、本当に、これでロッキーはリングを降りるんだ、もうロッキーには会えないんだ、という思いと、これ以上語るべきロッキーの物語はもうないのだ、というスタローンやスタッフ、キャストの思いが結実したシーンなんです。

勿論、「クリード」シリーズはありますが、あれはもうスタローンの手から巣立ち、新しい物語としてロッキーが機能する話です。
これはこれで、ロッキーファンへの嬉しいサプライズ。

「みんなこの試合をジョークと思ってた
でも今は誰も笑ってない」





エンドクレジットは、いかにロッキーシリーズが沢山の人に愛され、勇気づけてきたかが分かります。
これだけで、胸が一杯。



シリーズ全てを見返した後、映画とは全然関係ないのに、フランク・シナトラの「My Way」が頭の中で流れてました。
きっとロッキーの人生は、こういうことだったんですね。


https://news.yahoo.co.jp/articles/94075329ac6d62abbcb6e7670c6d229c8aa511eb



お前の中の野獣を解き放て。
全て吐き出して、今夜お前は自由になるんだ。
愛してるぜ、ロッキー。
あんがすざろっく

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