安堵霊タラコフスキー

ユリシーズの瞳の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
4.9
粗は多少あるけれど印象的なシーンが多数ある為アンゲロプロス作品の中でも好きな部類に入る映画。

リュミエール的架空の兄弟が遺したフィルムを探すこのロードムービー、途中眼鏡の女とのラブロマンスとか必要性を疑う箇所もあるものの、最初の海辺での2シーン1カットとか野いちごみたく超現実的な家族の回想シーン、崩壊したレーニン像を運ぶ船のシーン、タルコフスキー的な湖畔のシーンに終盤のテーマ曲の演奏シーン等一度見たら記憶に刻みつけられること必至の見事すぎる映像表現の印象が最終的に勝るおかげで途轍もない名作を見た気分にさせられ、それ故長尺にもかかわらず頻繁に目を通したくなる一品となっている。

アンゲロプロスのように長回しが主体の監督の作品は、シーンの力強さが重要になってくるから、この作品みたいに印象に残るシーンが多い作品の方がより素晴らしく思えてしまう。

しかしアンゲロプロスと直接関わりの無かったジャン・マリア・ヴォロンテを冒頭で悼んだのは、やはり彼の出演作品にいくつか携わったトニノ・グエッラの気持ちを汲んでのことか。