ちろる

未知への飛行のちろるのレビュー・感想・評価

未知への飛行(1964年製作の映画)
3.9
キューブリックの『博士の異常な愛情』と全く同じ年に上映され、そのシンクロ度に多くの映画ファンが驚愕したとされる本作。
それだけこの時代に人々が『核戦争』という存在に戦々恐々としていた事が伝わります。

ストーリーはアメリカの軍事コンピュータが、誤ってソ連に対する核攻撃指令を発してしまうところから始まる。
命令を受けた爆撃機は直ちにモスクワへ向けて発進、帰還可能を超えてしまうという、あらすじだけで恐ろしすぎる・・・

アメリカも、ソ連ともに相手を攻撃のための核兵器を持っていて、その上で相手の情報技術を撹乱するノウハウを持っている。
限られた時間はあとわずか、互いのことはもちろん信用しきれるはずもなく、トップは極限状態の中でどう決断を下すのか?

シーンのほとんどは密室の会話劇で、絵面としては派手なものではないのだけど、なんでだろう?脚本や演出がすごいのか、ぐいぐいと物語に引き込んでいく凄みがこの作品にはあって、個人的にはかなりぶっ飛んだブラックユーモアで飛ばした『博士の異常な愛情』より
硬派でシリアスさのあるこっち派。

密室の会話劇を主にしただけあり登場人物一人一人にしっかりとしたアイデンティティを持たせて、それらがディスカッションを積み重ねて結論に向かわせることで、とんでもないこの物語に一定のカタルシスを感じてしまったから。
どちらも作品も時代の側面を切り取った素晴らしい衝撃作であるので、これから観る人は是非同じ日に楽しむことをお勧めしたいです。
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