けーはち

眠狂四郎 多情剣のけーはちのレビュー・感想・評価

眠狂四郎 多情剣(1966年製作の映画)
3.4
市川雷蔵=眠狂四郎第7弾。彼の名を騙って女を殺す辻斬りが現れたりするのだが、十五の生娘を身請けして養ったり、行きつけの遊女を口説いたり、結構マイペースな狂四郎。「円月殺法は刀が一周するまでに相手を誘う煽情の技」というまた催眠術じみた設定が出てきたが、相変わらずセンセーショナルな娯楽要素が取っ散らかる中でも、黒幕は淫蕩暴虐の限りを尽くす将軍の娘で、権力の闇を暴き快刀乱麻を断つ孤剣という本筋は貫かれ、理屈を超えた妖しき剣の強さは本作でも遺憾なく発揮される。

物陰から潜み見るような画角が独特だったり、スモークや陰影、手振れで揺れるカメラなど撮影も凝っていて、能面や座敷牢などのギミックも印象的で、和風伝奇ゴシックホラー味がある。音楽は『ゴジラ』の伊福部昭でバロック調のチェンバロが良い。