こたつむり

理由のこたつむりのレビュー・感想・評価

理由(1995年製作の映画)
3.7
★ 正義も真実も 在るのは君の中
  だから 君が言うならばそうなのだろう
  僕は悪 道端に転がった ただの悪

70年代にアメリカの片隅で殺された少女。
その容疑者として逮捕された黒人男性。
彼は関与を否定するも、黒人だからという理由から横暴な取り調べで自供を強要され、裁判で下された判決は死刑だった…。

という冒頭から始まるサスペンス。
いわゆる先入観や思い込みと闘う物語ですね。
確かに、歳を重ねて実感しましたが、世の中の大半は“見た目どおり”。綺麗に表面を装っても、土台が腐っていれば朽ちるのは間違いありません。

しかし、例外も多々あるわけで。
僭越ながら、僕もゴーレムのように「威圧感がある」と言われますが、中身はプルプルと震えているスライム。やはり、表層だけで判断してほしくないのです。

そういう意味ではエド・ハリスの役柄が皮肉的。何しろ、僕の中では“質実剛健で地に足が付いたイメージ”でしたからね。鉄格子の中で「ヒャッハー」なのはアンソニー・ホプキンスの専売特許じゃない、と身をもって教えてくれました。

まあ、そんなわけで。
自身の価値観を揺さぶるサスペンス。
確かに“先入観が目を曇らせる”のは事実ですが、それが先入観となる可能性もあるわけで。物事を公平に捉える難しさを痛烈に感じた次第です。

だから、大切なのは選択と覚悟なのでしょう。
何を正しいと捉えるのか、何を邪だと裁くのか。決定権を持つのは自分。映画を楽しめるかどうか…も、作品に責はなく、自分次第なのだと思います。

確かに本作で言えば。
着地点は容易に予想できますし、それが効果的だったかは微妙なところ。しかし、それは本作を劇場公開時に鑑賞していなかったから…という可能性も否めず。1995年に本作の問題提起は新鮮だったのかもしれません。

考えれば考えるほど嵌る沼。
映画の感想って本当に難しいですね…。
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