息子の思い出を残したい夫と、忘れたい妻。悲しみの形の違いが、なおさら埋めようのない喪失の深さを物語る。
淡々と流れていく日々。でも、ちょっと触れるだけで壊れてしまいそうで。それでもそ知らぬ顔で日常が続いていく。痛みが宿された時間の描きかたがとても印象的だった。
別の世界に続く兎の穴は、不思議の国のアリスからきてるのでしょう。
そんな世界があることを願わずにはいられない。
なにより誠実さに溢れていて、答えがなくともしっかりと描くべきをものを見つめようとする姿勢が伝わってくる。じっくりと心に浸透してくる感じが好き。