たじたじ

ブロークバック・マウンテンのたじたじのレビュー・感想・評価

3.5
淡々と進んで最後はあっけなかったのに余韻がすごい。

同性愛は一見すると異性愛と変わらないけれど、1960年代という時代はそれを許さない。妻に釣り仲間だよと告げて数日間家を出るなど、堂々とダブル不倫しておきながら、コソコソ会うしかない。普遍的なラブストーリーの要素もあるけど、同性愛ならではの葛藤も含まれてて、なんかもう終始もどかしかった。

想い合ってるのにそのときの事情ですれ違うのはラブストーリーあるある。ジャックは目線ですぐいろんな人に好意を投げかけるほど恋愛体質でイニスへの愛も溢れ出てる。一方のイニスはどこまでも真面目で無骨だからイニスよりジャックのほうが惚れてるように思うけど、言葉や態度にしないだけでイニスのほうが内にめちゃくちゃ愛を抱いてるのがわかる。

何よりヒース・レジャーがすごくいい。声がいい。ふと影を落とす感じもいい。亡くなったことが本当に惜しい。ミシェル・ウィリアムズもアン・ハサウェイも、どことなく気づいていながら見て見ぬフリをするーー夫婦間でよくあるやつーーを体現してるのもいい。

特に印象的なのは、初めて一線を超えたあとに映された、獣に襲われて死んでる羊。キリスト教で羊は何かしらの意味を持つ生き物であるし(詳しくは知らん)、罪悪感や葛藤を示す効果的な演出だった。
たじたじ

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