タマル

アウトローのタマルのレビュー・感想・評価

アウトロー(1976年製作の映画)
1.4
『運び屋』記念
クリント・イーストウッド特集!

第2弾『アウトロー』(76)
原作は72年の小説 “Gone to Texas ”
著者フォレスト・カーターはKKKを公然と支持する人種差別主義者で、本作では南部のヴィジランティズムだけが強調され、南部白人とネイティブ・アメリカンとの幸せな関係が偽装され、南部を舞台にしたロードムービーでありながら、黒人は一切存在を抹消されてしまっている。
『ダーティ・ハリー』からその嫌いはあったが、本作をもって、イーストウッドは狂信的な右翼とみなされるようになった。


以下、レビュー。


イーストウッド監督作品5作目。クリント製ウェスタンでは2作目にあたる。製作はワーナーとマルパソで、イーストウッドがプロデューサーも兼任した。
イーストウッドは3作目に『愛のそよ風』というバカバカしい恋愛物を撮り、大コケ(都合20年間ロマンスを撮らなくなる)。さらに4作目『アイガー・サンクション』でスタッフを事故死させ、イメージを大きく損ねた上で、またも大コケしてしまう。
本作は落ちまくりのイメージ回復&キャリア再興を狙った『ダーティハリー3』の脚本製作中に作られた、言わば場つなぎ的一作であった。クリントも監督する予定はなく、後に『ライトスタッフ』を撮るフィリップ・カウフマンが監督・脚本を務めるはずだった。
しかし、性欲を抑えきれないイーストウッドは、独断でソンドラ・ロックをヒロインに据え、ナンパに精を出し始める(後にロックとの不倫がばれ、妻マギーと別居する)。この人事に関して、監督とイーストウッドは揉めに揉め、ブチギレたイーストウッドは彼をクビにし、自身が監督を務めると決定してしまう。
この独裁者もかくやという強権発動に、DGAはかの有名な「イーストウッド・ルール」を制定するのである。

個人的に本作は全く楽しめなかった。イーストウッド映画は潔い割り切りが美徳であるが、今回はそれが悪い方向に出てきてしまっていると感じた。
具体的には、演出がずさんで、いわゆるツッコミどころがすごく多い。

イーストウッドらしくない下手な泣き崩れ演技から始まって、弾丸貫通しても平気な若者、マシンガンシークエンスの地形不明瞭感、「銀行強盗した」のくだりの無駄さ、死体の方を向いてるように見えないモンタージュ、フィーリングで通じ合って寝ちゃう無用心さ、決闘シーンで銃を抜くのにもたつく、照明を使っておらず暗い、酋長の石ころがし(トラブルメイク)の突発性、決闘シーンの単調さ、ロードムービーのストーリーとの整合性のなさ

そして
銃を持ったはがり素人の弾はほぼ当たらないって描写
『荒野のストレンジャー』でやったばっかりやろがい!!!!
なんでバンバンあたるんや!!
自分の作った作品で矛盾がおきてどうすんだよ!!!
しっかりしろ!!!!!!!


という事で、いろいろずさんだった上に、2時間と長かったので、ひたすら苦痛でした。
ただ、ソンドラ・ロックの不思議ちゃん演技は、本人のデカ目の気持ち悪さと相まっていい味出してるなと感じました。
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