垂直落下式サミング

マッドマックスの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

マッドマックス(1979年製作の映画)
4.0
エキサイティングなメタル文字のタイトルのあと、画面下に「a few years from now(ほんの少し先の未来)」という字幕が記されたのち幕を開ける。そういう前置きだけして、この映画は有無を言わさずはじまるのである。
ナイトライダーなるクレイジーが駆る四輪集団を、同様にクレイジーな警察官が追跡し、エンジン内でガソリンが弾ける音、燃費を度外視した排気音、それにスラングだらけの人々の叫びが飛び交う流動的な画面、果ては激突とカークラッシュまでも、一種のバックグラウンドミュージックに思えてしまう。
そうやって、まんまと幻想に乗れそうな期待を抱かせておいて、壁が崩れごみが散乱する荒れ果てた警察署内を見せられることで、ここは「ほんの少し先の未来」なのだという現実にたち戻る。もし仮に、今日道行く人の全員が、カバンのなかのごみを一斉に捨てはじめたのなら、もうそこはマッドマックスなのではないか。
これをSFの絵空事だなんて言うな、一歩踏み出したすぐその先が、マッドマックスでない保証がどこにあるんだ。