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エド・ウッドのEyesworthのレビュー・感想・評価

エド・ウッド(1994年製作の映画)
4.5
【史上最低の映画監督、命を吹き返す】

ティム・バートン監督×ジョニーデップ主演「アメリカで最低の映画監督」と呼ばれたエドワード・デイヴィス・ウッド・ジュニア(通称エド・ウッド)にスポットを当てた伝記的映画。

〈あらすじ〉
50年代のハリウッド。スタジオの片隅で使い走りをしながら、映画監督になる日を夢見て働いていた映画青年エド(ジョニー・デップ)は、ある日業界誌に載った性転換をした男性の物語の映画化を知り、本当に女装趣味のあったエドは、シナリオを3日間で書き上げ、ふとしたきっかけで知り合った往年のドラキュラ俳優、ベラ・ルゴシの出演を条件に資金を得て、監督デビューを飾るが......。

〈所感〉
ティム・バートン監督作品だが、ファンタジー要素は薄目なので持ち味が発揮されていたかはちょいと疑問。ただ、ハリウッドで成功を収めている監督がよくこの題材のモノクロ映画を作るなぁと感心させられる。『チャーリーとチョコレート工場』や『シザーハンズ』よりもジョニー・デップの魅力がたっぷり伝わるのが勝っている点かも。この作品の主人公エド・ウッド監督のことはこの映画に触れるまで全く知らなかったが、少し調べてみると、彼のすべての作品において技術的には学生映画以下で救いようもなく、彼の作品が商業ベースで残った事自体奇跡というレベルと酷い言われ方。彼の作品を簡潔に表す言葉として、「ゴミのような映画は数あれど、映画のようなゴミはエド・ウッド作品だけ」というヤバいものもある。どの界隈でもそうだが、あまりにも酷評されると逆に見たいという層が現れ、火がつくパターンもあるようでなんだかんだ現在でもカルト的な人気を誇っているようだ。彼が本当にこんな感じの人柄だったかは不明だが、ジョニー・デップが演じているので、コミュ障じゃないビリー・ウォンカって感じの陽気で快活な自信家に思えた。そして、ちゃんと独自の世界観、価値観を持っていて、カリスマ性もあって映画監督としては魅力的な人物に見えるが、扱う題材や本人が女装家とあって当時の人々からの偏見が凄く、取っ付きにくかったのだろうと想像する。映画製作って大変なんだなぁ。それでも落ちぶれスターのベラを広告塔として上手く活用したり、プロレスラーを起用したり、友達を使ったりと彼独自のキャスティングが良い。ドラキュラで一躍名を馳せたベラが本当の棺桶に収まる姿がエモい。ベラは死ぬ直前まで映画の仕事ができて、死んだ後も映画に出演できて俳優冥利に尽きるだろう。そうだ。俳優は死んでも我々が見ることでドラキュラのように棺桶の中から命を取り戻すのだ。だから我々はたまに昔の俳優の姿を台詞を回顧しようではないか。この作品自体が偉大なるエド・ウッド監督の回顧録であるように。
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