Lilly

ニコライとアレクサンドラのLillyのレビュー・感想・評価

ニコライとアレクサンドラ(1971年製作の映画)
3.8
史実に忠実に作ってあり、脚本が素晴らしかった。ニコライとアレックスの心情や感情の揺らぎを丁寧に織り込み、300年の歴史を持つロマノフ王朝が、何故、そして、どのように終焉を迎える結果に至るか、描いていた。

ラスプーチン役の俳優の怪演技、革命派のトロツキー、レーニン等、異なる立場思想の人物像も、彼らの吐く台詞から、当時のロシアが抱えていた多くの問題が浮き上がり、観者にじんじんと伝わってくる。

ロマノフ家の豪華絢爛な豪邸(エレベーターまで付いている).バレエを鑑賞しながらの華やかな社交パーティーが開催される傍ら、農民達は食べるにも貧窮し、ボロ布のような服をまとい凍えている。
この映像美術的対比も、この時勢を巧みに表現していて、貧富格差の説得力があった。

エンドロールの背景の赤は、社会主義のカラーと戦争や革命内戦反逆により流した数多くの人々の血を表しているのだろうか。

遺伝病である血友病を背負った皇帝の息子も不憫だが、彼に負の遺伝子を譲ってしまったサニーが、自らを責める姿も気の毒だった。彼女が、胡散臭い宗教家に洗脳されて行く様子も痛ましかった。

ニコライIIの国民の現状を読み取る想像力の欠如と狭すぎる知見、そして皇族プライドが招いた悪政の悲劇だが、広大で多民族が住むロシアを政治的に納める難しさも同時に感じた。
一国の皇帝から失脚後囚われの身となり、堕ちゆく彼の姿は、未来はいつも不確定で大どんでん返しがあり得ることを示している。
人生は最後までわからないものだ。
Lilly

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