アイガーサンクション

夢売るふたりのアイガーサンクションのネタバレレビュー・内容・結末

夢売るふたり(2012年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

「紙の月」のすぐ後に観た。
同じピカレスクな筋だけでいうとありがちなペシミスティックな展開が読めてしまった嫌いはある。「紙の月」の方が予想外の展開で、より重いのに読後感も悪くなく、そして映画としてのクオリティも高い。勿論こちらも質は高いし、結婚詐欺に走ってしまう夫婦ふたりの感情の機微とズレてゆく様は素晴らしいと思える。ラストの解釈は人それぞれだが、カメラ目線の里子は向こう側への訴えかけとすれば、「殺人の追憶」ほどの訴求感はないものの、深読みしたくなる。

本作はダブル主演なので、その二人の演技は非常に良かったが、いかんせん物語の“筋”が、感情を抑えた分突き抜けていない。里子が狂気な感情を発露させたシーンには我が身を乗り出せたし、最後の方で彼女が走るシーン(「紙の月」の梨花が走るのと重ね合わせもした)は、逞しく生きるも夫の愛情を欲している相反する感情が出ていたように思うがどうだろうか。

蛇足ながら、鶴瓶が怖い探偵というか筋者をやっていて、非常に存在感があった。脇の女優陣も皆、魅力的だった。