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この広い空のどこかにのCTBのレビュー・感想・評価

この広い空のどこかに(1954年製作の映画)
5.0
細やかなエピソードの積み重ねで人の優しさを描きながら容赦ない現実もしっかり見せてくれる。
当時の川崎のハンパない工場や機関車の煙突の煙、その煙を肯定的に捉えて「胸の中で情熱を燃やせ」と「ちんば」になって人生を拗ねている高峰秀子を元気づける描写があるけれど、そのモクモクの工場でアルバイトして肺を悪くして田舎に帰る貧乏学生もいる。貧乏学生に同情して「コンビーフ持ってけよ」とは言うけれど「あまり情けを掛けすぎるな」とか急病の子供を救う為の金の無心に対して「詐欺じゃないのか?」とか佐田啓二の台詞は寂しいけれどそれが現実。
小さな幸せの描写に心温まりながらも孤独な者と幸せな家族のシーンの切り返しが多く、特にラストのエピソードは自分の幸せは誰かの不幸の上に成り立っていると突き付けてくる。あれは悲し過ぎる。その後も茶の間の笑顔で終わるかと思ったらまた暗闇で終わるんだよなー。
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