Kumonohate

白蛇伝のKumonohateのレビュー・感想・評価

白蛇伝(1958年製作の映画)
4.5
日本初の総天然色特撮映画である「白夫人の妖恋」、日本初の総天然色長編アニメである「白蛇伝」。題材を同じくするこの2作がわずか2年の間隔で公開されたのには何かあると思っていたが、「白夫人の妖恋」を日本と共同制作した香港のショウ・ブラザーズが、そのアニメ化を東映にもちかけたのがきっかけだったとは。

それはさておき、内容としては、歴史的文化遺産価値が殆どを占める。物語の描写やテクニカルの面では、古色蒼然感は否めない。

しかし、パイオニアは貴い。

「初めてのこと」を実行し完成させるために使われるエネルギーや才能や努力やアイディアの量と質は膨大だ。お手本となるテキストがほぼ皆無の状態で、試行錯誤や失敗を繰り返し壁にぶち当たりながら先に進んでゆくには、とんでもない精神力も必要だ。時には正面切った正攻法では突破出来ない難関を、あの手この手でくぐり抜けるしたたかさも備えていなくてはならない。意にそぐわないまま強いられる妥協を呑み込むためのストレス耐性も不可欠。

だから、そうやって道を切り開いていったパイオニアたちのことを、他の誰よりも凄いと思うし尊敬する。やがて、後に続く者の中からは、一般的な評価の高い傑作が生まれてくるだろうが、開拓者の存在無くしてはそうした傑作も無いワケだから。そういう意味で、「白蛇伝」の価値は計り知れない。
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