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孫文の義士団のdm10foreverのネタバレレビュー・内容・結末

孫文の義士団(2009年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

【ドラマがアクションを必要とするとき・・・】

最初に、
この映画の邦題『孫文の義士団』を見て、おおよそ面白そうな作品には思えず、劇場での鑑賞を見送った経緯があります。大好きなドニー・イェンがでていることは承知していましたが、B級アクションかぁ・・くらいにしか考えていませんでした。なので、そろそろDVDにもなったし観て見るか・・・と。

正直、自分の嗅覚のユルユルさに愕然としました。こんなに骨太な作品だとはつゆ知らず、ご無礼をお許しください~(土下座)。

舞台は辮髪(べんぱつ)が良く似合う辛亥革命直前の中国です。革命を成功させる為に義士たちが集い、孫文を身を挺して守ります(と言っても目の前に孫文がいるわけではありませんが・・・)。
この時代背景+中国となると、ワンチャイシリーズの「ウォンフェイフォン」に象徴されるようなカンフー映画を想像してしまいますよね。もちろん今作にもカンフーはありますが、そこにスポットが当たることはありません。
アクションシーンがある映画なら普通はそこをプッシュして宣伝しそうですが、この映画に関してはそのような記憶がありません。

この映画のスポットはあくまでも、暗殺者たちとその目をかいくぐって革命を成功させようと画策する義士たちとの間のジリジリとした時間が、丁寧かつ重厚に描かれていました。これはアクション俳優を使っていることを考えれば異例中の異例で、監督が手っ取り早くアクションに逃げなかったことを評価すべき点だと思います。

革命には痛みが伴うと劇中でも言われていましたが、本当に切ないくらい悲しいシーンもあり、普段なら見ていて爽快なはずのアクションシーンでさえ、セピア色の悲しい、重いものに見えてしまいます。
いわゆる「アクションの為のドラマ」としたのではなく、「ドラマの進行上、必要だったアクション」というほうが正しいのでしょうか。ドラマの流れを壊すことなく、後半の圧倒的なアクションシーンを迎えるまでのラッシュは、久しぶりに感じた衝撃でした。


観終わった後、もう一度邦題を読み返してみました。
『孫文の義士団』
ひょっとしたら、これで正解なのかもしれない。
これがこの物語を一言で表す唯一の言葉なのかもしれない。
下手な洒落っ気を出すほうが、むしろ作品の雰囲気を壊しかねない。

そう考えると、劇場で見られなかったことを後悔してしまいました。
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