本作はニコラス・ローグ監督の代表作の1本ですが初見です。
ローグ監督作ってこれまで何を観たっけと調べると、40年くらい前にデビッド・ボウイ主演の『地球に落ちてきた男』を観ただけでした。たったの1本。
しかも例によって観たと言う記憶だけで、内容は全く憶えていません。
かつて幼い愛娘を目を離した隙に池で溺死させてしまった夫婦の周りで起こる不可思議な現象が描かれます。
イギリス風ゴシックテイストのホラーサスペンスですが、主な舞台は水の都ベネチア。
製作はイギリスとイタリアの合作です。
この雰囲気は昨年公開の『名探偵ポワロ:ベネチアの亡霊』にも影響を与えてそうな・・・
盲目の霊媒師、謎の連続殺人、予感、幻視・・・
オバケやモンスターがドヒャッと出る類のホラーではなく、終始不穏な空気の中で物語は静かに進行します。
明るいシーンは無く、天気も最初から最後まで雨か曇り空。
ローグ監督は元は撮影監督で『アラビアのロレンス』や『華氏451』なんかを撮ってます。
主人公は先日亡くなったドナルド・サザーランド、このモジャモジャ頭と髭は『SF/ボディ・スナッチャー』のときと同じ仕様ですかね。
その妻に『ギャンブラー』『シャンプー』の頃のジュリー・クリスティ。
この二人の妙にリアルなセックスシーンが長い長い。
溺死した時の娘が真っ赤なレインコートを着ていたせいで主人公は赤い色に神経質になっており、それが悲劇を招くことに・・・
原題は“Don't Look Now”で“赤”の要素は無いんですが、この邦題はアリ。
ゴシック・ホラー短編小説集の一話を読み終えたときの印象に近い感じでした。
音楽担当は後のデ・パルマ作品の常連で、本作が初の映画音楽となったピノ・ドナッジョ。