KnightsofOdessa

赤い影のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

赤い影(1973年製作の映画)
4.0
[それでも去りがたいヴェネツィア] 80点

世界で三番目くらいに頭おかしい映画。稀代の変態監督ニコラス・ローグの代表作であり、映画の中の最高のセックスシーンベスト1位という名誉なのか不名誉なのかよく分からない賞まで獲得している。真っ赤でテカテカのコートを着た娘が湖のど真ん中に仰向けで沈むシーンから分かるように、本作品はミステリーではなくサイコスリラーなのである。脱ぐ過程と着る過程を交互に配した例のセックスシーンはやっぱり変態的で好ましい。ヴェネツィアという視認性は抜群なのに移動できないという不自由さに外国人である疎外感が加わり、更には水関連で娘を亡くした苦しさが乗せられることで、絶望のミルフィーユが完成する。全編に渡る不穏な空気は、登場人物全員がワンテンポずれた行動を繰り返すから発生しているように見えるのは気のせいだろうか。異常な展開でありながら、ある程度想像できそうな筋なんだが、彼らの行動がワンテンポずれるせいで、真の意味で先が見えなくなる恐怖というか視認性の悪さが付与されるんじゃないか。あと人の話全然聴いてないし。

一度船に乗る妻を見たってのは、多分霊感がある的なセリフの答えに相当するんだろうけど、個人的には『Dark ダーク』的な歪曲時間軸が存在したのかなと思って静かに萌えた。あと、ジュリー・クリスティの似顔絵を貰った警察官が目のとこグリグリやって落書きしてて、その顔が加藤史帆の書いた佐々木久美みたいで笑った。
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