タカシサトウ

秋のソナタのタカシサトウのレビュー・感想・評価

秋のソナタ(1978年製作の映画)
4.5
[母と娘の対立と葛藤]

 すさまじい限りだった。

 娘(リブ・ウルマン)が、母(イングリッド・バーグマン)から受けた傷への恨みや憎しみを洗いざらいぶちまける。そして、それを受けた母は、自分も両親の記憶がなく、音楽だけが自分の表現方法だったと。そして、一瞬、自分は勝手な人間だった、と後悔するが、別れた後に、もう一人の障害者の娘(レナ・ニーマン)を施設に預けた罪悪感から「死ねばいいのに」と言い放つ。この娘と母のやり取りが凄まじかった。

 また、娘のエヴァのリブ・ウルマンと母シャルロッテのイングリッド・バーグマンの対決が激しかった。この二人の演技力に圧倒される。この位のレベルの俳優は今は居ないのではないか。

 イングリッド・バーグマンは、夫と子供を捨てて、イタリアに渡ったことあり、シャルロッテと重なってくる。バーグマンは、これが遺作となってその後に亡くなったことも感慨深い。

 また、イングマール・ベルイマンも映画や演劇人として、二人の娘に良い親であったとは言い難かったらしく、シャルロッテとエヴァの関係に重なってくる。 

 芸術家の親と子の関係は葛藤を生んでいくことを描いている。その個人の事情も超えて普遍的なものになっていると思われる。(2018.8.13)

 娘が母から受けたネグレクト的が虐待への恨みを言いつくし、母も母になれなかった言い訳をし、身も蓋もない感じがある。ベルイマンのトラウマの大きさかもと思った(2020.11.16)。