知らない奴の名前がドンドン出てきて、人間関係の説明もまったくなく、ポンポン話が進む。
ひとつの事件に対して物語が進行していくのではなく、結局のところ、ミステリーでもサスペンスでもなく、オーソン・ウェルズ演じるクィンランの人間ドラマだった。
正しさが捻じ曲がった老刑事の寂しい人生。
まるでリドリー・スコットの「悪の法則」のような、予め筋書きのあったような人生の悲しい因果。
オーソン・ウェルズの容姿の役作りからカメラワーク、カット割、そして「杖」に隠されたメッセージに見る緻密なシナリオ術。
視覚的に作劇的に充実した90分だった。