MSTY

ヒミズのMSTYのネタバレレビュー・内容・結末

ヒミズ(2011年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

一言でいえば、アンニュイな雰囲気の漂う青春映画です。

主人公の住田くんは、無気力とも諦観ともとれる気質を持っており、一見するとリアリストなのですが、一方で「普通」になりたいという、ある意味で途方もない夢を抱いています(「平凡」で「普通」な生活を実現するというのは結構大変なことだと思います)。

それに対してヒロインの茶沢さんは、他のクラスメイトとは違う雰囲気を持つ住田くんに惹かれていて、何かにつけて住田くんに絡んできます。

様々なトラブルが身の回りに起こり、ふたりの前には先行きの見えない「暗闇」が目の前に広がってきます。人によっては絶望を感じるような類の「暗闇」です。しかしそれでも、ふたりはどうにか前へと進もうとします。たぶん、希望を失っていないから。

映画の最初と最後に、「主人公(たち)が走る」というモチーフが採用されています。この「走る」というのは、もしかしたら、前向きに生きようとする気持ちの表れであるのかもしれません。そう解釈すると、住田くんは、徹頭徹尾、前に進むこと自体は諦めていないのではないかなと思いました。「普通」を目指していたことも彼なりの「前向き」であったし、普通になれないことを悟った上で「おまけ」の人生を生きようと決心したことも彼なりの「前向き」の表れだと考えることができるからです。

今の社会は、変化が著しく、先行きを想像することが困難で、将来の自分がどのようなものになっているのかをはっきりと具体的に想像しにくい社会です。この作品は、そんな社会でもどうにか暮らしている人々の内面の繊細な部分がよく描かれています。
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