回想シーンでご飯3杯いける

Tommy/トミーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

Tommy/トミー(1975年製作の映画)
3.4
「ロック・オペラ」という言葉は、恐らく皆さんあまり聞いた事が無いと思うのだけれど、その言葉の響きから、どういう物なのかは何となく想像出来ると思う。

「Tommy」は、もともとロック・バンドThe Whoが'69年にリリースした4枚目のアルバムで、このアルバム自体がひとつの物語になっている。音自体の雰囲気は、同年に出たThe Beatles「Abbey Road」のB面に近いのだが、「Tommy」の方がより音楽的な幅が広く、物語性も高い。文字通りロック・バンドによるオペラになっているのだ。このアルバムは当時高い評価を受け、全英2位、全米4位と、セールスの面でも大成功を収めた。

そして、1975年。映像を加えた完全版として公開されたのが、この映画版「トミー」だ。三重苦を背負った少年が、ピンボールを通して自身を表現する術を学び、ヒーローとして成長していく過程を描いた作品になっている。ネタバレになってしまうので詳しく書かないが、少年が三重苦に至った原因は、少年の“感覚”そのものの否定にあり、突き詰めればそれは“ロックという表現”に置き換える事も出来る、ロックを通して自己の存在を探求していた当時のキッズの心を熱くさせたに違いない。

三重苦の主人公を演じているのは、The Whoのヴォーカリスト、Roger Daltrey。他のメンバーももちろん登場する。他にEric ClaptonやTina Turner等、有名ミュージシャン、俳優も登場。中でも主人公のライバル役を演じるElton Johnのキレッぷりが素晴らしい。彼の衣装の凄さは、もはや伝説の域。

また、題材をピンボールにした事で、映画全体の娯楽性も非常に高く、特に小難しく考えなくても、普通の映画として十分楽しめると思う。