さすらいの用心棒

宮本武蔵 巌流島の決斗のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

宮本武蔵 巌流島の決斗(1965年製作の映画)
3.7
宮本武蔵と佐々木小次郎との対決を描いた全五部作のシリーズ、堂々の完結編。

宮本武蔵を剣豪としてではなく、悩み苦しむ人間として描いてきたシリーズ。
剣で己の人間性を高めるために勝利に拘ってきた武蔵が、やがて剣のために人間性を捨ててゆく手段の目的化に迷い込んでゆく。前作で子どもを刺し殺したことでその極北に至り、顔色がどんどん病人のようになってゆく。
最後の最後に武蔵は剣は武器でしかないことに気付き、五部作で武蔵の刀に倒れていった人たちが全員無駄死になるというラストも痛烈だ。

前作『一乗寺の決斗』はあれだけ傑作だったにも関わらずヒットせず、製作中止にまで追い込まれた本作。予算を抑えた結果、窓から見える海がビニール使用という学園祭並みのクオリティだったり、エキストラの数が明らかに少なかったり、締めとなる「巌流島の決斗」も満足なロケができず琵琶湖で撮ったことで打ち寄せる波が弱々しかったり、画的にはかなりショボい。
健さんも、殺陣をできないために代名詞ともなる「巌流島の決斗」がものの一分で終わってしまっている。他の侍と一戦交えるときも、カメラが敵の足元ばかり追うので健さんが殺陣ができないのが丸わかりなのが、悲しい。

とは言え、『宮本武蔵』『人間の條件』といった重厚なシリーズがすっかりなくなってしまい、日本の映画にもこういう時代があったことを偲ばせてもらった。