さききち

ブラックホーク・ダウンのさききちのレビュー・感想・評価

ブラックホーク・ダウン(2001年製作の映画)
3.8
2020年51本目
<意外と観ていなかった有名作品を観よう週間>
01年、リドリー・スコット監督作。
74回アカデミー賞 音響賞/編集賞受賞。

93年、米国が介入したソマリア内戦での失策と激烈な市街戦を描く。145分という尺ながら、鑑賞者自身も痛みと血生臭い戦地の畝りに飲み込まれ、あっという間にエンドロールに至る。

小難しい説明は極力廃した造り。あくまで大半が市街戦での描写であり、稚拙な表現を用いるなら「体感型」、「観て感じろ」な作品。とは言え、米国軍兵士の視点を通した描写に終始しており、背後の政治的動向やその帰結は飾り程度にしか語られない。

「実在の事件」を語る場合
・背景や状況説明:大枠か綿密か
・視点:単一視点か多視点か
・描写:抑え気味かプロパガンダ的か
・教訓:作品だけで完結か事後の補完が必要か
など、多数の語り口がある。

本作は、「歴史的事実」の全体像把握のためには補完が必要なタイプの作品であることに間違いはない。造りとして批判的な見方もあるだろう。ただし、戦場の痛みを、血肉汗の臭いを、銃弾の速さと恐ろしさを、ダイレクトに感じるという意味で、比肩なき作品だと感じる。

『プライベート・ライアン』にも『フルメタル・ジャケット』にも『地獄の黙示録』にも、近年だと『1917』にも、敵わない卑近な感覚がここにある。
さききち

さききち