karmapolice

ガス燈のkarmapoliceのレビュー・感想・評価

ガス燈(1944年製作の映画)
3.8
Gaslight:ジョージ・キューカー監督、シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン主演、ブロニスラウ・ケイパー音楽、ジョセフ・ルッテンバーグ撮影、1944年アメリカ作品。パトリック・ハミルトンの1938年の戯曲を原作としたサスペンス映画のアメリカ版。

舞台は1875年のロンドンのソーントン街。冒頭から霧深い夜の街に揺らめくガス燈が並ぶ光景に一気に曳き込まれる。ガス燈は要所で引きの画面やクローズアップと映し出されるが、その揺らめきや消えたり、点いたり、不穏な人の心理状況を表しているかのようで効果抜群だ。

物語は早々怪しい人物が分かるが、一体何故そうするのか?その疑問と、若妻ポーラ(イングリッド・バーグマン)の美しさと美術や衣装の魅力に惹かれて釘づけにされていく。かなり好きなムードでこの世界観に浸る楽しみがあったと思う。壊れていく女性の何とも言えない美しさにバーグマンはハマりにハマっていた。そして真相を知った後の彼女の微妙に目付きの変わった恐ろしさにドキッとさせられる。

この作品が基で「ガスライティング」という言葉が、1970年代後半以降は心理的虐待を意味する用語として使われるようになったらしい。

最近の残虐で奇抜過ぎるサイコスリラーものより、人の繊細な心理の揺らめきや狂気を巧く表している様な気もした。何と言っても全編気品溢れるムードも一級品だと思う。さすが傑作!!
karmapolice

karmapolice