ペコ

Mのペコのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
4.2
ドイツの巨匠監督フリッツ・ラングのトーキー作品。
20年代に実在した連続殺人鬼ペーター・キュルテンから材をとっている。

ロリコン精神異常殺人犯の主人公が、恐怖にかられた市民たちに捕まり、処刑されそうになる。

犯人が街の何処かに潜んでいると、誰もが疑心暗鬼になる不穏さ。狂気。
昔のドイツ映画独特の陰影表現。
背中に転写されたMの烙印。
どのシーンもイメージが明確で印象深い。

そんで1番凄いと思ったのは、中盤の2分半ほどの長回しシーン。
店の中の様子をグルリと撮りながら、そのままカメラが上方を向くと、窓があり、そのまま真っ直ぐカメラが窓ガラスを突き抜けて部屋へと入っていく。
今なら『バードマン』みたいにCGで長回し風に見せることも出来るけど、当時はそんなもんなかったから一発撮りだったんだろうな。長回しを感じさせないスムーズな場面移動。いや〜凄い…!

精神異常者は責任能力が欠落しているということで、刑罰を免除される。
でも、被害者側の気持ちはそれでは収まらない。
しかし、だからと言って市民が勝手に犯人を処罰してもよいものか…?
個人が集まり大衆になると、途端に暴力的になり、ブレーキが効かなくなる。
ラストで、主人公を救ってくれるのが警察と言うのがなんとも皮肉的。
大衆が排他的になるのはナチズムを予感させるし、裏社会の人間が先頭に立って主人公を裁こうとするのが、どちらも正義に見えない構図になっており、非常に面白い(`・ω・´)b

そもそも人が人を裁くことなんて本当に出来るのだろうか?
現代の死刑制度にも繋がってきて深いテーマであると共に、永遠のテーマでもある(−_−;)
ペコ

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