囚人13号

Mの囚人13号のレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
4.5
口笛を吹きながら忍び寄る殺人鬼は上半身・下半身・影へイメージが分解され、子供の失踪もそれを地上へ留めておく力点の消失を示唆する風船の上昇/無人の食卓という二カットでごく簡潔に処理される。

異常者に怯える人々が結集して排他的世界を創り上げるとパワーバランスが逆転し、唐突にリンチ映画へ姿を変えるという構造はワイマール時代の巨悪譚とアメリカ時代の集団心理との接続を担っているとさえ。

マブゼやスピオーネの頃より、しばしば主人公への同調と客観視を同時に達成してしまうラングは凶暴化した町に飲み込まれるピーター・ローレの被害者という側面、悲劇のヒロインよろしくその幼児性を強調する。
グリフィスのリリアン・ギッシュとは対極のようだが、彼の奇形的な風貌に付き纏う社会的拒絶という不幸は渡米後、同じく童顔のシルヴィア・シドニーによって「冤罪」へと姿を変え受け継がれていく。
囚人13号

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